平成20年度めどに基金創設、売主の故意も保証対象に・・・国土交通省
世間を騒がせた昨年末の耐震強度偽装発覚から早一年。一連の問題についての国土交通省(以下、国交省)のこれまでの対応と今後の動向についてまとめた。
昨年末の耐震強度偽装問題を受け、国交省では「構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会」「住宅瑕疵担保責任研究会」「社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会」などを設置し、建築物の安全確保、賠償資力確保措置などについての検討を進めてきた。問題発覚から1年を迎えた現段階で、これまでなされてきた検討の経緯、今後講じられる措置などは以下のとおり。
まずは耐震強度偽装問題に関する国交省の対応について。偽装問題発覚後、冒頭で述べた委員会等を中心に問題を検討。その中で建築確認・検査の厳格化、指定確認検査機関の業務の適正化、図書保存の義務付けなど建築物の安全性確保を図るための建築基準法等を部分的に改正してきた。
この流れを受け、今年12月20日には瑕疵担保責任の履行に関する情報開示措置を施行する予定。これにより宅建業者や一戸建て住宅等の工事請負業者は、契約締結前に保険加入の有無を説明することや契約締結時に加入している保険等の内容を記載した書面を買主に交付することなどが義務付けられる。
耐震強度偽装問題はマンションデベロッパーなど売主にも大きな波紋を及ぼした。マンション分譲のシーズクリエイト(東京都渋谷区)経営企画室の村戸氏は問題の影響を語る。
「昨年末の事件は業界全体にとって大きな痛手となりました。当社でもマンション発売時期の変更などを余儀なくされました」
このような事例は多く、購買キャンセルが相次ぎ、倒産の憂き目を見た業者も珍しくない。現に事件の発端となった小嶋進氏率いるヒューザーは経営が成り立たなくなり、多くの入居者に甚大な被害を及ぼしたことは周知の事実だ。
これに伴い浮上してきたのが売主の賠償資力措置の重点的な検討だ。これは売主が倒産しても、欠陥住宅を補償する資金を確保できる制度が必要との観点からだ。今年10月24日に建築士法などの改正案を閣議決定し、補填を強化する制度づくりが本格化している。
具体的事案として、すべての売主に「保険への加入」、または補償資金をあらかじめ確保して第三者にあずける「供託」、「信託」のいずれかを義務付ける方向で検討がなされている。平成19年1月下旬に召集される通常国会で審議され、平成20年4月1日からの導入を目指す。
同じく平成20年4月1日をめどに、新たな基金を設ける方向で話が展開している。これは故意・重過失による欠陥住宅の購入者を救済するための措置だが、基金への資金拠出が義務付けられるのは保険加入を選んだ売主だ。供託・信託では故意・重過失を問わず、どんな理由で瑕疵が生じても売主が補償することになるのに対し、保険の場合は故意・重過失が免責となり、信託・供託か保険加入かで補償範囲に差が生じてしまう。この差を是正するためだ。
新基金の規模は数億から十数億程度、保険契約1件あたりの拠出金額は数百円程度で十分との見方が有力。建築確認の強化などこれまでの耐震偽装防止で欠陥住宅の流通をかなり抑えられるからだ。
「確かに事件を受けて建築確認へ向けられる目は格段に厳しくなりました。今後は欠陥住宅の数は激減していくでしょう」
こう語るのは環境・建築設計(東京都渋谷区)代表取締役の宮坂正寛一級建築士。
今回掲載した事案は国交省で協議・検討されている内のほんの一部に過ぎず、他にも多くの懸案が挙がり、日々協議されている。
耐震偽装問題の発覚はそれほど大きく重要なものであり、これに対する磐石な体制が整うまでにはまだ多くの歳月が必要なようだ。(12月11日号)

