家財共済業界再編へ、2団体統合し少額短期保険協会が発足
保険業法改正にともなう共済業界再編がいよいよ本格化してきた。家財共済など共済商品が幅広く普及している賃貸不動産業界も大きな影響を受けそうだ。取り扱っている保険・共済商品の見直しを迫られている不動産会社もある。
6月12日、青学会館に共済事業者・保険会社関係者が集まり、日本少額短期保険協会の設立総会が開催された。これまで共済事業者の協会として活動してきた日本少額短期保険協会と全国少額短期保険業協会が合併し、新たに日本少額短期保険協会として活動を開始した。
日本少額短期保険協会会長には、日本厚生共済会理事長で旧日本少額短期保険協会会長の倉田武氏が就任し、副会長には旧全国少額短期保険業協会理事長で、「いきいき世代の会」事務局長の平木範之氏と、ティーシーエル共済理事長で旧全国少額短期保険業協会専務理事の坂間均氏が就任した。
6月12日時点での同協会の正会員は44、準会員1、賛助会員33。今後も、新規会員の加盟を続ける予定。
協会は業界を代表して金融庁との折衝を行うほか、少額短期保険業者向けにコンプライアンス対応支援、商品内容の協議、調査研究、消費者に対する情報提供を行っていく。また少額短期保険募集人教育、資格試験・登録を行うための準備も進めている。
保険業法改正により、無認可共済が金融庁の監督下に置かれることになり、共済として運営してきた事業者は、2年間の移行期間中に特定保険事業者の届けを出し、その後、保険会社になるか、新設される少額短期保険業者へ移行するか、あるいは共済契約を他の事業者へ移転して事業をやめるかの選択を迫られることになる。
これまでは、ある程度の規模を超える共済については、少額短期保険業者に移行するものと考えられていたが、少額短期保険業者への移行のハードルは非常に高いことが明らかになっている。
現時点では、家財共済の運営者については、どの既存事業者が、いつの時点で少額短期保険会社になるのかについて明らかになっていない点が多い。
運営者内部の体制整備、人材の確保、財務基盤の強化、法令遵守の徹底、保険募集体制の整備など、既存事業者に求められる課題は複雑多岐だ。それだけに協会に求められる役割は大きい。
業法改正を機に、新たに家財保険を取り扱う少額短期保険会社を立ち上げる動きが活発になっている。
特に目立つのは、保険会社出身者の参入だ。新たに少額短期保険会社を立ち上げる準備を進めるとともに、少額短期保険会社向けシステムの販売にも乗り出そうとしている。
元あいおい損害保険上席常務役員の河田孝彌氏が社長を務めるフレックスホールディングス(東京都港区)は、家財保険をターゲットに業務を開始。グループ内に家財保険を対象にした少額短期保険会社を立ち上げるとともに、システム開発のファーストエイペックス・コンサルティングス(東京都港区)と共同でシステム会社を設立し、少額短期保険業者向けにシステムを販売する。インターネットを介してソフトを提供するASP方式で、保険会社設立から商品認可、事務・システムサービスまで提供する。
長野県を拠点とするe−Net共済会(長野県佐久市)を率いるのは、三井住友海上火災保険出身の土屋知博社長。同共済は、三井住友海上のほか、生命保険や旧大蔵省出身者など、業界経験者が立ち上げた。これまで家財共済運営のほか、別会社で地方不動産会社などを対象にした共済立ち上げ・運営コンサルティングを展開してきた。
今年3月、これまでコンサルティングを手がけてきた7つの共済会を統合。e−Net共済会を存続会社として、引き受け件数約7万1000件、代理所数約300件の共済としてスタートを切った。
新規参入だけではない。獲得の好機ととらえた大手損保会社は、共済の代理所への営業攻勢に出ている。業法改正を機に業績を伸ばす共済事業者もある。共済・保険会社の勢力図を塗り替える業法改正の動きはますます加熱しそうだ。
【フレックスホールディングス:河田孝彌社長のコメント】
あいおい損害保険時代にシステム統合を経験し、保険会社におけるシステムの重要性、難しさを痛感しました。
改正保険業法に定められた通りに少額短期保険会社を運営しようとすると、システム構築に膨大なコストがかかります。それにもかかわらず、売上げの上限は 50億円と定められているのです。そこで当社では、家財共済を運営している少額短期保険事業者を対象に低コストで導入できるASPを利用したシステムを提供することにしました。
賃貸不動産会社が代理所・代理店となっている共済をそのまま活用できるよう、家財の少額短期保険事業者の業務を支援するシステム開発に取り組んでいます。
【e−Net共済会:土屋知博社長のコメント】
当社は、近日中に特定保険業の届出を行う予定です。来年度早々には少額短期保険業の登録を申請する予定で準備を進めています。
保険募集人資格に関する教育テキストも準備し、今月から代理店に対してすでに県単位で教育を開始しています。当社では、保険データベース、事務処理システムのe−netwebシステム(略称「News」)を開発しました。オンライン上で保険契約の管理ができるので、代理店側の事務処理を簡便化できます。NEWSを起爆剤にして、代理店数を増やしていきたいと考えています。
【インタビュー:日本少額短期保険協会 倉田武会長】
――これまで個々に活動してきた2つの団体が今回統合しました。統合のきっかけは何でしょうか。
倉田旧日本少額短期保険協会と全国少額短期保険業協会は、それぞれ独自の活動を続けてきましたが、団体の設立趣旨・目的はほとんど同一でした。そこで既存事業者および新規参入者に対する情報提供・支援体制を早急に整えるためには統合により体制を強化すべきと考えました。また金融庁から、業界団体窓口を統一して欲しいという要請を受けていたという事情もあります。
――現在、保険業界は保険金の不払いなどが大きな問題になっています。少額短期保険事業者にとっては難しい時期の船出となりますが、その点についてはどうお考えですか。
倉田 少額短期保険会社は「ミニ保険会社」とも呼ばれますが、ミニとはいえ、保険業界の仲間入りをする以上、消費者にとっては保険会社であることに変わりありません。法令遵守への対応は最も重要な問題です。協会としても、消費者からの相談窓口を設けるとともに、各事業者に対して積極的に指導・助言を行っていきます。
――将来的には少額短期保険募集人の資格試験も行うようですが。
倉田 今年9月からは、生損保協会が少額短期募集人試験を行うことになりますが、経過措置終了後の2年後を目処に、実施主体を当協会に移行することを踏まえた準備を進めています。当面のところは、試験のための事前講習を全国12都市で月1回ペースで実施していく予定です。また、講習補助材料として、イーラーニングによる講習も準備しています。
――今後どのように会員事業者の拡大を図っていくのでしょうか。
倉田 事業者が財務局および財務事務局に特定保険業者の届出を行うことになりますが、その際に財務局に当協会の存在を伝達いただいています。初代会長として重責をまっとうしたいと考えています。
【用語解説】少額短期保険業者
保険業法の改正により新たに設けられた制度。「ミニ保険会社」とも呼ばれる。損害保険の場合は、引受期間2年以内、保険金額1000万円(複数契約合算の場合は5000万円)が対象となる。業法に定められたソルベンシー・マージン比率、責任準備金、最低資本金などをクリアするとともに、保険募集に関しては少額短期保険募集人の資格が必要になる。
(6月26日号)

