抵当権

抵当権(ていとうけん)(羅:hypotheca、英:hypothec、仏:hypothèque、独:Hypothek。ただし、英訳ではmortgageとも。)は、日本法を含む大陸法系の私法上の担保物権の一つ。当事者の合意によって設定される約定担保物権(やくじょうたんぽぶっけん)であり、質権とは違って引渡しを要しないために設定者が引き続き使用・収益をすることができるのが特徴である。英米法におけるモーゲージ(mortgage;譲渡抵当とも訳す。)(のうちのlienとされるもの)に似る。 以下、日本法における抵当権について説明する。

抵当権の由来

日本の抵当権規定は、ボワソナード旧民法を介して、フランス法・ベルギー法の影響を強く受けている。しかし、民法制定後、日本でドイツ法的解釈が支配的となると、抵当権は交換価値のみを把握する価値権であり、担保に供された物の使用には介入するべきでないと考えられるようになった(特に我妻栄の影響)。もっとも、20世紀末になると、そうしたドイツ的解釈が日本において前提となる必然性はないと考えられるようになった。

抵当権の概要

以下、日本の抵当権(369条以下)を念頭に説明する。

まず債権者(抵当権者)は自己の債権を確保するため、抵当権設定者(通常は債務者。物上保証を参照)の不動産または権利(地上権及び永小作権)に抵当権を設定する。抵当権は物権であるから、意思表示のみにより設定できるが(176条)、登記が対抗要件となるため(第177条)、ほとんどの場合登記される。

そして債務者が債務不履行に陥った場合には抵当権が実行され、抵当権者はその代金から他の一般債権者に優先して弁済を受け、債権を回収することができる。抵当権の特徴は、抵当権が設定されても債務者から債権者へ担保となっている物の占有を移す必要がなく(同じ約定担保物権である質権は占有を移さなければならないことと対照的)、所有権者は自由に利用・収益・処分ができる点にある。所有権を第三者に譲渡した場合は、抵当権付の所有権が移転することになる。

なお、不動産や地上権及び永小作権以外の権利であっても特別法により抵当権が設定できる場合がある(自動車・航空機等 詳細は抵当権の対象あるいは担保物権法を参照されたし)。

抵当権の目的

抵当権を設定することができるのは、登記・登録制度がある物や権利だけである。これは当該物に抵当権が設定されていることが誰にでも分かるよう、公示する必要があるからである。その典型は不動産であり(第369条1項)、地上権と永小作権にも抵当権を設定することができるが(第369条2項)、そのような形で利用されることはあまりない(よって以下では物に抵当権が設定された場合を念頭に記述する)。

また、各種の特別法によってその対象が不動産以外にも広げられている。前述の通り、登記や登録といった抵当権の公示手段があるものである。鉱業権、漁業権、立木(立木法)、船舶(商法848条)、自動車、農業動産、航空機、建設機械、工場(工場抵当という)がある。さらに、企業組織全体をその対象とする財団抵当がある。ここで対象となるのは工場財団や鉄道財団などである。また財団抵当の手続を簡略化した企業担保権がある。

根抵当

根抵当(ねていとう)は、継続的に発生する債務を一定額(極限度という)まで担保するための抵当権を設定するものである(担保すべき債権が特定されていない)。例えば継続的な取引関係がある場合、その取引から生じた債務を担保するためにある土地に根抵当権を設定する。これが通常の抵当権であると、個別の取引が終わるたび附従性によって抵当権が消滅してしまうので、次の取引の際に改めて抵当権を設定しなければならず、煩雑である。1971年(昭和46年)の民法改正によって398条の2以下に根抵当の規定が設けられたが、実際の取引ではそれ以前から用いられていた。この民法改正では、極度額は債権極度額のことをいい、それまで認められていた元本極度額は設定できないこととなった。

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